戦舞

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 戦場のさなかに飛び込んで一閃、刃を半月型になぎ払う。その鋭さに一瞬あたりがひるんだ隙に、まずは手近な場所にいた打刀に飛びかかる。袈裟懸けに斬りかかるそれを刃で防がれるところまで想定済みだ。ぎいんと鋼の擦れ合う音を高らかに響かせたと思った次の瞬間には、がら空きの腹を横に薙いでまず一体。砂埃を立てて倒れ込んだ仲間の死骸にようやく事態を飲み込んだのか、今度は右前方、青江の刃が届かない間合いから薙刀がぶんと大きな一振り。眸子の先でそれを弾き飛ばした勢いで、青江は刃を逆手に持ち替えた。大脇差とはいえ脇差は脇差、敵の懐に飛び込んでの接近戦には慣れている。打刀や太刀にはできないだろう肉薄した間合いからの刺突。肉に刀身が埋もれる感触に背筋がぞくぞくとする。さらにそこから横へと刃を滑らせれば敵の腹はすぱりと切れた。半分も切れ込みを入れられて踏ん張ることもできない薙刀を回し蹴りにして引き倒す。これで二体。後ろから飛びかかってくる三体目がいるのもとうに見えていた。蹴りの勢いを殺さずにもう片足を上段に払い抜き頭を狙う。のけぞって避けられたのには思わず舌打ちが出たが、裏腹に口元の笑みはますます深まるばかりだ。繰り出される敵の刃を逆手のまま捌いて一撃、二撃。三撃目を強くはじき返して反撃に出る。ひらりと白装束を翻して一回転する間に順手に戻した刃を下から上へと切り上げる。皮一枚裂いたところで致命傷にはなり得なかったが、明らかにひるんだ隙を青江が逃すはずがない。のけぞることで無防備に差し出された胸の中心をとんと一突き。背まで抜けた刃を引き戻した途端に敵は無様にどう、と倒れた。三体目。その目が光を失って濁っていくのを見つめたまま、ぶんと血脂を払った彼は、その場に動くものがないことを知覚して流れる動作でその刃を鞘へと収めた。乱れてしまった白装束の形を直して、髪を一度振り払い、革手袋を深くつけ直すと、息一つ乱さないままに次の戦場を求めて走り出した。

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