魔法舎のエレベーターホールは見送る者と見送られる者で賑わっている。
先日、南と中央の魔法使いたちが事件を解決した赤い三角屋根の学校のある村へ、今度はお客様として招かれたのだという。ルチルやミチル、リケに加えて、今回はクロエも一緒だ。学校に通ったことがないという話をしたら、是非ということになったらしい。
みな、素朴な装飾の衣装に着替え、おそろいの鞄と帽子姿で、もうすぐ出発という段になっても、クロエだけはなかなかエレベーターに乗ろうとしなかった。
「ラスティカ! 俺がいない間、一人で起きなくちゃだめだよ? みんなを鳥籠にいれたりもしないでね? あー、もう、心配だなあ……!」
「大丈夫だよクロエ。僕はここでいつもどおりにしているから」
不安の色濃いクロエの声とは対照的に、ラスティカはいつものおっとりとした調子でそれに応える。本当?と目を見て尋ねる弟子に、微笑みを一つ。
「楽しんで、行っておいで。せっかくのお呼ばれなのだから」
ぽん、と背中を押されて、ようやくクロエも踏ん切りが付いたらしい。
「ありがとう! じゃあ、行ってくるね!」
ちん、とベルが鳴って、エレベーターの扉が閉まった。
リケの見送りに来ていたカインは、静かになったエレベーターホールで苦笑気味に隣を見やる。
「お前たちを見てると、ひとくちに師弟って言ってもいろんな関係があるんだなって思うよ」
例えば魔法舎に限っても、いろんな形の師弟がある。オズとアーサーはもちろんのこと、スノウとホワイトはオズやフィガロの師匠だったというし、そのフィガロも、弟子がいるようなことを前に言っていた。そのどれもが違う形をしていて、でもどれも、不思議な絆がある。友情や主従関係、共闘関係とも違う、目に見えない繋がり。
「カインの思う師弟とはどんなものだい?」
ラスティカに聞かれて、改めて考えてみる。
「そうだな……師匠はもっと厳格で弟子をいつも厳しく叱ってそうかな。弟子は、クロエみたいに素直だけど、師匠の面倒を見ることはないだろうな。素直に師匠を尊敬してる、かな」
ラスティカが目を細めて微笑んだ。
「なるほど。あなたの師匠はしっかりものなんだね」
微笑まれたカインは困惑する。
「……今、俺の話をしてたか?」
「おや、違ったかな?」
師弟という関係に、自分を含めて考えたことはなかった。でも、師匠と言われて思い描いた人は確かにいたのだ。厳格で、いつも厳しく叱られた相手。
「違わない……のかな」
わからない。今となっては。もう。


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