よろしい、今から君は私のネコだ

624 文字

2

 憮然とした顔のロマニが座っている。どこにって、床に。胡座をかいて、そっぽを向いて、心底機嫌悪そうに、気に食わないと全身で表現している。
 そのさまを十分に堪能した私は、おもむろにチェアから立ち上がると宣言した。
「よろしい、今から君は私のネコだ」
「はいはい……」
 なにせ昨夜の賭けチェスの成果だ。もちろん凡人が、万能たるダ・ヴィンチちゃんに万に一つも勝てるはずがないから、それなりのハンデは付けた。その上での結果だ、誰にも文句を言わせるつもりはない。
「お手……は、犬だしなあ。ネコって何の芸をするんだっけ?」
「一時間だからね、約束は」
「はいそこ、人語をしゃべらない!」
「……」
 さて、何をして遊ぼうか。一時間しかないなら有効に。嫌がるネコの手を取って爪を切ってやるのもいいし、毛がつやつやになるまでブラッシングしてもいい。膝の上に乗せて寝入るまで毛並を撫で付けてやるのだって、ネコだっていうなら文句はないはず。
「いや、まずは、そうだね」
 胡乱な目でこちらを見上げる、その白い首が目に入る。私のネコだというなら、それなりの印をつけなければね。ひらひらとスカートを飾っていた正絹のリボンを一本引き抜く。マントの裏地と同色の真っ青なそれを、しゅるりと彼の首に一巻き。苦しくないように位置を調節すると、いいとこの飼い猫みたいに品の良い首輪ができた。
「似合ってるよ、ロマニ」
 彼は諦めたみたいに溜息をつく。その釣れない様子も、なかなかネコっぽくて悪くないとも。

関連小説

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です