その顔が見たかった

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 きっかけは人類最後のマスターたる赤毛の少女。
 レイシフト先での少女の無茶な戦闘ぶりに我慢ならなくなったドクターが、ミッション終了後に少女を呼び出して始めたお説教は軽く一時間を超えた。
 はじめはしおらしく聞いていた彼女だったが次第に飽きが来て、反省の態度だけは変えずに視線を彷徨わせていたところ、たまたま視界に写り込んだIDカードに記載された日付。タイムリーすぎるその情報に、頭のなかであれをこうして、それをああしてと計画を練るうちに一時間はすぐに過ぎた。
 そして、《その日》。
 就業後も遅くまで管制室に残って仕事をするロマニを、ダ・ヴィンチちゃんがいつもの調子で叱って、食堂に追い立てる。
「夕飯も食べ損ねた? 昼もゼリーで済ませてたくせに、ああもう。今日はマシュが手伝ってたんだぞ、この親不孝モノ」
「親になった覚えはない……けど、そう聞くとお腹が減ってきたな」
 まんまと彼に食欲を湧かせることに成功し、食堂の前まで連れて来る。そこまで来て一歩譲ってみせる彼に、おや、とロマニが不審に思ったのもつかの間。
 幾重にも、クラッカーの弾ける音。花吹雪。と、何人ものサーヴァント、スタッフたちの声が続く。
『ハッピーバースデー、ドクター!!』
 目を丸くする彼を、後ろからダ・ヴィンチちゃんが首に腕をかけ顔を寄せ、熱烈なキスを送る。わざわざ真っ赤なルージュを塗りたくったので、頬にくっきり痕が残った。どっとあがる笑い声に、声も出ないキスマーク付きの伊達男。
「その顔が見たかった!」
 ダ・ヴィンチちゃんが快哉を叫ぶ。向こうでマスターの少女とマシュが手を叩きあっている。

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