正しい制服着用方法

1,412 文字

3

(ライルの制服があまりにも性的だったので)


 アレルヤはその姿を目にした途端絶句した。絶句したというか、むしろ驚きすぎて変な声が出た。
「ろ、ろく、ろっ、ロックオン!」
「なんだそのロシア人作家の書き出しみたいな」
「はい?」
「なんでもない」
 変なことを言うから普通に聞き返してしまった。いや、そうじゃなくて。
「ロックオンあなた! いったいなんて格好してるんですか!」
 気を取り直して叫んだアレルヤを、さも煩い静かにしろと言いたそうに、しかし一言も言わずにその人は、片耳に指を突っ込むしぐさでそれを表現した。
「何って……なんか問題あったか?」
「大ありです!」
 アレルヤは頬を紅潮させて、だが彼の姿を直視し続けるのがいたたまれず、ふいと視線を脇に反らした。
 避けたはずなのに、瞼の裏にくっきりと焼き付いている。ただでさえ真っ白な肌なのに、普段日に当たらないせいでそれこそ石膏のように白い肌の色。
「なな、なんで、ジャケットだけ着てるんですか!」
 そうなのだ。ロックオンはこともあろうに、CB指定の制服の、あの丈の短いジャケットだけを羽織っているのだ。地肌に直接!
「別に……。風呂あがって一服しようとしたんだけど、そのまんまじゃ少し肩が寒かったからそこらへんにあった適当なもんを着ただけだよ」
 言葉に違わずロックオンの右手の指にはシガレットの短い筒が挟まっている。寒かったにしたって、それじゃあなおのこと腹が冷えるだろうと思うのだが、彼に言わせてみれば問題は肩なのかもしれない。彼的には自分の格好に特に問題を感じていないようなのが一番の問題だった。
 どういう理由でジャケットがこの丈になったのか、制服が指定された経緯すらよく知らないアレルヤには理解も及ばなかったが、今この時だけはそれを決めた担当者の胸倉を握って前後にがくがくと揺さぶってやりたい気分だった。
 彼に割り当てられたパーソナルカラーの緑が地肌とのコントラストを強調して目に痛い。まさしく目の毒だね、ハレルヤ。アレルヤはいなくなって久しい片割れに呼びかけずにはいられなかった。
 そろそろと視線を戻すと嫌が応にも目に入れないわけにはいかないその肌。もう三十路も近いはずなのに、無駄な贅肉の見当たらない白い腹が、隔てるものなくあらわにされている。形のいい鎖骨が半分、襟元から見え隠れしている。やわらかそうな茶の髪が襟に沿っていて、それを払い去りたい衝動がアレルヤを襲った。そのまま視線をずらすと、開いた胸元がすれすれのところで乳首を隠しているのが目に入る。見えないのが余計にいやらしい。なんで見えないのか、あ、いや。
「アレルヤ」
 まるで思考を読んだかのようなタイミングで声をかけられて、アレルヤは肩が露骨に緊張した。
「う、ええ、別に僕そんな何もいやらしいことなんて考えてませんから……!」
「いや、何を言っているのかよくわからないんだが、そうじゃなくて」
 煙草を持たないほうの手で髪をかき上げながら、ロックオンは何か言いたそうな表情をした。それだけでは伝わらないことを理解したのか、深く深く息を吐いて。
「お前こそ、服着たほうがいいんじゃないか、いい加減」
「え」

 備え付けのシャワールームから上がったばかりでなにも身につけていなかったアレルヤは、顔を赤くしたまますごすごと着替えのために奥へと引っ込んだのだった。

関連小説

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です