おれは真っ暗な道を歩いている。
目を凝らしても、一歩先すら見えない道だ。
足元だけが、うすぼんやりと闇の中に浮かんでいる。
真っ暗すぎて、そこに道があることすらわからないはずなのに、おれはとにかくその道を進まなければならないということだけ、わかっていた。
途方に暮れる。
先がない。あるのかもしれないが到底見えない。
なんでおれは一人なのだろう。こんな暗い道を、一人で行かねばならないんだろう。
「君は一人じゃないよ」
村田が言った。
なんで気がつかなかったんだ、村田はおれのすぐ横で、ランプをかざして歩いていた。
「ほら、これでどうだい」
村田がかざすランプが柔らかい光で先を照らす。
ああ、道は確かに続いていた。
*
「昨日、変な夢見た」
村田はふうん?と気持ばかりの相槌を打って目の前の皿に盛られたクッキーに手を伸ばした。
全然聞く気ないな、というかおれより断然クッキーの優先順位が高そうだ。
「おまえが出てきたよ」
「えっ、まさか渋谷……僕のこと――」
「な、な、なんでお前そこで頬染めんだよ! 別にそういう夢じゃねえよ!」
「フロイトによれば夢は深層心理を象徴するものだからねえ。しかもすべてはセックスに通ずる」
「セ……ッ! お前何言っちゃってんの!?」
「やだなあ性少年、君だって興味あるんだろ?」
「今絶対字違った! 絶対変な字だった!」
おれの叫びなんて気にもかけず、村田は優雅にティーカップを口に運ぶ。
「で、夢がなんだって?」
「……もういい」
ふうん、とまた適当な返事をして、なのに村田は流れるように続ける。
「当り前じゃないか、僕はいつだって君の傍にいるよ」
はっとして顔を上げると、いつもの人を食ったような笑みを浮かべていて、これだからダイケンジャーは、と呆れたような溜息をついた。


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